1: 2015/08/23(日) 13:10:07.94 ID:???.net
凍ったスピンをさらに冷やして量子効果で液体に融かす | 理化学研究所
http://www.riken.jp/pr/press/2015/20150821_2/
http://www.riken.jp/~/media/riken/pr/press/2015/20150821_2/fig1.jpg
図1 パイロクロア格子構造とその基本単位である正四面体の電子スピンの向き
左:スピンアイスのパイロクロア格子構造と電子スピンの位置(赤丸)
右:パイロクロ格子構造の基本単位である正四面体の電子スピン構造
スピンアイスでは、4つの電子磁気モーメント(右図内の矢印)は、それぞれ正四面体の中心向き(in)か、その逆向き(out)に強く束縛されている。隣り合うスピン対には、スピンを平行にさせようとする力が働くため、inとoutの対(黒線)を好むが、全てを黒線では結べない(幾何学的フラストレーション)。最も安定な2-in, 2-out状態でも、エネルギーが高いin同士、または、out同士の対(緑線)が生じてしまう。また、3-in, 1-outと1-in, 3-outでは、それぞれ磁化のN極の単極子(右図内赤丸)、S極の単極子(右図内青丸)が正四面体の中心にあると見なすことができる。さらに不安定な4-inと4-out状態では、これらの単極子の値はそれぞれ2倍になっている。
http://www.riken.jp/~/media/riken/pr/press/2015/20150821_2/fig2.jpg
図2 中性子の照射によって電子スピンを散乱させた際の散乱強度の空間変調パターン
磁化の単極子が分化して、スピンがアイス則を満たした構造に凍結しかけた低温領域(左)では、特殊な方向に散乱強度が強い尾根状の構造が現れる。アイス則を満たす多数の異なるスピン構造の間を量子力学的に遷移している最低温領域(右)のスピン液体状態では、尾根状のパターンが消失し、窪みが現れる。このパターンは、極めて低速の「光子」が存在すると仮定した場合に得られるものとほぼ一致する。右側の散乱強度はカラースケールを示す。
http://www.riken.jp/~/media/riken/pr/press/2015/20150821_2/fig3.jpg
図3 凍結した電子スピンと融解した電子スピン
左、右:アイス則を満たしたまま凍結した電子スピン(実線矢印)の構造の例。
中央:スピンの集団ゼロ点振動によって融解した電子スピンの液体状態。
スピンの量子力学的集団運動(中央)によって、アイス則を満たした2つ異なるスピン構造(左右)の間を遷移することが可能となる
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図1 パイロクロア格子構造とその基本単位である正四面体の電子スピンの向き
左:スピンアイスのパイロクロア格子構造と電子スピンの位置(赤丸)
右:パイロクロ格子構造の基本単位である正四面体の電子スピン構造
スピンアイスでは、4つの電子磁気モーメント(右図内の矢印)は、それぞれ正四面体の中心向き(in)か、その逆向き(out)に強く束縛されている。隣り合うスピン対には、スピンを平行にさせようとする力が働くため、inとoutの対(黒線)を好むが、全てを黒線では結べない(幾何学的フラストレーション)。最も安定な2-in, 2-out状態でも、エネルギーが高いin同士、または、out同士の対(緑線)が生じてしまう。また、3-in, 1-outと1-in, 3-outでは、それぞれ磁化のN極の単極子(右図内赤丸)、S極の単極子(右図内青丸)が正四面体の中心にあると見なすことができる。さらに不安定な4-inと4-out状態では、これらの単極子の値はそれぞれ2倍になっている。
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図2 中性子の照射によって電子スピンを散乱させた際の散乱強度の空間変調パターン
磁化の単極子が分化して、スピンがアイス則を満たした構造に凍結しかけた低温領域(左)では、特殊な方向に散乱強度が強い尾根状の構造が現れる。アイス則を満たす多数の異なるスピン構造の間を量子力学的に遷移している最低温領域(右)のスピン液体状態では、尾根状のパターンが消失し、窪みが現れる。このパターンは、極めて低速の「光子」が存在すると仮定した場合に得られるものとほぼ一致する。右側の散乱強度はカラースケールを示す。
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図3 凍結した電子スピンと融解した電子スピン
左、右:アイス則を満たしたまま凍結した電子スピン(実線矢印)の構造の例。
中央:スピンの集団ゼロ点振動によって融解した電子スピンの液体状態。
スピンの量子力学的集団運動(中央)によって、アイス則を満たした2つ異なるスピン構造(左右)の間を遷移することが可能となる
(前略)
背景
電流を流さない多くの磁性体では、結晶を構成するイオンの周りに局在した電子が、自転(スピン)することによって極めて小さな磁石を形成します。スピンは通常、磁性体を低温にすることで、互いに同じ向きにそろった強磁性、または、反対方向に向いて打ち消し合う反強磁性など、一定方向にそろった磁気秩序を有する状態に転移します。しかし、磁性体の結晶構造に幾何学的な制約が加わる場合、磁気秩序の形成が抑制されることがあります。
スピンアイスと呼ばれる磁性体は、2つの正四面体が1つの頂点を共有してつながったパイロクロア格子構造をとり、各格子点に電子スピンが局在しています(図1左)。各スピンの向きは、周囲のイオンや電子との相互作用の影響で、パイロクロア格子構造の基本単位である正四面体に対して中心向き(in)か、外向き(out)かのいずれかに強く束縛されています。
隣り合う2つのスピンは、相互作用のために極低温でinとoutの対(図1右、黒線)を作ろうとします。ところが、正四面体上のすべての隣り合うスピン対でこれを満たすことは不可能で、結晶構造に幾何学的な制約が生じます。妥協策として、各正四面体上の4スピンのうち、2つがin、残り2つがoutとなる最も安定した2-in, 2-out(アイス則)構造を取ります(図1右の上段)。さらに、アイス則状態から1つの電子スピンの向きを反転すると、不安定な3-in、1-out構造と1-in, 3-out構造の正四面体の対が生じ、それぞれ中心にN極とS極が発生します(図1右の中段)。このN極とS極は、電子スピンから分化した磁化の単極子として
認識されています。
2010から2012年にかけて小野田らは、上述したスピンアイスの単極子が、量子力学に従って運動する理論模型[3]を導きました注1)。一方、スピンアイスのように単極子を分化させたまま、スピンを凍結や秩序化をさせることなく絶対零度に向けて冷却することができれば、量子スピン液体と呼ばれる新しい物質状態を実現する可能性が理論的に提唱されています。しかし、詳細な数値シミュレーションによってその確証を得ることが課題となっていました。
注1) 2012年8月8日プレスリリース「電子スピンから分化したN極とS極のヒッグス転移を磁性体で観測」
研究手法と成果
研究グループは、スピンアイスの単極子が量子力学に従って運動する最も簡単な理論模型に対して、量子モンテカルロ法による数値シミュレーションを行いました。この計算手法は、近似などを用いないため、統計誤差・数値精度の範囲で厳密です。
対象とした理論模型を冷却していくと、まずアイス則を満たすスピンアイスとして凍結していきます。この温度領域では、電子スピンから分化した単極子は長い時間スケールでは消失することがシミュレーションで示されました。これは、単極子の絶縁体が実現していることを意味します。また、1つだけN極とS極の単極子の対を生成した際、両者に静的な磁気クーロン相互作用がはたらいていることも、中性子を入射することで電子スピンが散乱した異方的な空間パターンのシミュレーション結果(図2左)から分かりました。
詳細・続きはソースで
引用元: ・【量子力学】凍ったスピンをさらに冷やして量子効果で液体に融かす 電流を流すことなく磁性体中のスピンを制御する可能性を示す 理研
凍ったスピンをさらに冷やして量子効果で液体に融かす 電流を流すことなく磁性体中のスピンを制御する可能性を示す 理研の続きを読む