1: フランケンシュタイナー(WiMAX) 2014/02/02(日) 09:36:56.15 ID:99ZS/nnr0 BE:331495834-PLT(12345) ポイント特典

命かけ 命いただく


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 城下町を抱く丹波の山並みは乳色の冬霧に包まれていた。

 兵庫県篠山市。盆地の外れに車を止め、3人の猟師と里山に踏み入った。ぬれた落ち葉が埋める斜面を、はうようによじ登る。
裸木が寒風に揺れていた。

 「おるか」 そばに立つ猟師が聞いた。

 「おる」 先を登る猟師が答える。

 見上げた山腹。ちらつく雪の中にイノシシが立っていた。

 「メンタや」 メスだ。「14貫」。52・5キロ。猟師たちの目算は内臓抜きの重さだ。

 息を荒らげた獣がいきなり飛びかかってきた。が、すぐつんのめって転げ回る。左前脚を締めつけた直径4ミリのワイヤが、山肌の木の根に結ばれていた。

 「猪(しし)は怖いで。わなのワイヤもバチンと切られる。命をいただくには、私らも命かけな」

 猟師たちが手首の太さほどの立ち木を身の丈に切り出した。両手で頭上に構え、じわりと近づく。雪は、やんでいた。
ふと獣の動きが止まる。その瞬間、生木の先端が弧を描いた――。

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